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9月1日、買い足す前に見に行こう――我が家の“備え”をひらく日

  • 執筆者の写真: 西園寺ケン
    西園寺ケン
  • 5 時間前
  • 読了時間: 6分

「防災の日」は、つい買い物モードになる

9月1日は「防災の日」。この時期になると、お店やインターネットの広告で「今すぐ備えを」という言葉をよく見かけますね。長期保存できる水、非常食、モバイルバッテリー。ずらりと並んだ商品を見ていると、なんだか自分の家の備えが心もとなく思えて、つい何か買い足したくなってしまう――そんな経験はありませんか。

もちろん、備えが足りないなら買うことは大切です。でも、ちょっと立ち止まって考えてみたいのです。私たちの家には、実はもう、いろいろな「備え」が眠っているのではないでしょうか。

去年の防災の日に買った水。いつだったか用意した非常食。押し入れの奥にしまい込んだ懐中電灯。それらが「いざというとき、本当に使える状態か」を、私たちはどれくらい把握しているでしょう。

今年の9月1日は、あえて「買う日」ではなく「点検する日」にしてみませんか。すでにあるものに目を向ける。それだけで、我が家の備えはぐっと確かなものになります。

保存水のペットボトルを手に取り、ラベルの賞味期限を確認している手元のクローズアップ。ナチュラルな光、丁寧で落ち着いた印象


まずは「水」から見てみる

備えの中でも、いちばん大切だといわれるのが水です。人は食べ物がなくてもしばらくは持ちこたえられますが、水はそうはいきません。一般に、飲み水と調理用を合わせて「1人1日3リットル、最低3日分」が目安とされています。4人家族なら、3日で36リットル。2リットルのペットボトルにして18本ほどです。

ここでまず確認したいのが、賞味期限です。保存水は長持ちする印象がありますが、無期限ではありません。ラベルを一本ずつ見てみると、意外と期限が近いものが混ざっていることがあります。

もし期限が近いものを見つけても、がっかりしなくて大丈夫。それは「気づけた」ということです。期限が近い水は、料理やお茶に使って、新しいものと入れ替えていく。この「使いながら備える」やり方は、ローリングストックと呼ばれています。買って封印してしまうのではなく、日常の中でゆるやかに循環させる。無理なく続けられる、とても賢い備え方です。

ついでに、保管場所もチェックしましょう。直射日光の当たる場所や、暖房器具の近くは避けたいところ。ペットボトルは高温や光に長くさらされると、容器が傷むことがあります。涼しくて暗い場所に移すだけで、備えの質は変わってきます。

家族が一緒に、備蓄品を置いた収納スペースの前で、どこに何があるかを指さして確認し合っている様子。子どもも交じり、和やかで前向きな空気


しまい込んだものたちに、声をかける

水を見終えたら、次はほかの備えにも目を向けてみましょう。

非常食は、賞味期限だけでなく「本当に食べられそうか」も大事な視点です。何年も前に選んだものが、今の家族の好みや体調に合っているとは限りません。小さなお子さんが増えていたり、逆に大きくなって量が足りなくなっていたり。家族の姿は少しずつ変わっていきます。備えも、それに合わせて見直したいですね。

懐中電灯やランタンは、電池を入れて実際にスイッチを入れてみましょう。いざというときに「つかない」ほど心細いことはありません。電池が液漏れしていないか、明るさは十分か。ここで確認しておけば、暗闇の中で慌てずにすみます。

そして、意外と見落としがちなのがカセットコンロとガスボンベ。ガスボンベにも使用期限の目安があります。断水や停電のとき、温かい一杯が飲めるかどうかで、心の余裕はまるで違ってきます。

こうして一つひとつ手に取ってみると、「あ、これはまだ大丈夫」「これは入れ替えよう」と、自然と我が家の状態が見えてきます。点検とは、家にあるものたちに「調子はどう?」と声をかける時間なのかもしれません。


いちばん大切な備えは「家族との共有」

道具の点検と同じくらい、いえ、それ以上に大切なことがあります。それは、備えのありかを家族みんなが知っていることです。

どんなにしっかり備蓄していても、その場所を知っているのが一人だけだったら、その人が留守のときには意味をなしません。災害は、家族がそろっているときに起きるとは限らないのです。

だから、点検のついでに家族で歩いてみてください。「水はここ」「非常食はこの箱」「懐中電灯はここ」。実際に指さして共有するだけで、備えは「一人の備え」から「家族の備え」へと変わります。

小さなお子さんがいるなら、一緒に確認するのは立派な防災教育にもなります。ゲーム感覚で「水はどこにある?」とクイズにしてみるのも楽しいですね。真剣になりすぎず、家族の会話のきっかけにするくらいがちょうどいいのだと思います。

飲み水以外に、トイレを流すための生活用水をどう確保するかも、家族で話しておきたいテーマです。お風呂の残り湯を捨てずに置いておく、という家庭の工夫もよく知られています。何を、どこに、どれだけ――この共有こそが、いちばん頼りになる備えです。

カセットコンロや懐中電灯、非常食などの防災アイテムがテーブルの上に整然と並べられ、点検されている俯瞰の情景。明るく清潔感のある雰囲気


当たり前を支える「水」に、あらためて気づく

ここで少し、視点を変えてみたいと思います。

私たちは普段、蛇口をひねれば水が出ることを、まったく疑いません。顔を洗い、料理をし、喉が渇けばコップに注ぐ。あまりに当たり前すぎて、その存在をほとんど意識しないほどです。

けれど、その「当たり前」は、たくさんの仕組みと人の手に支えられています。水源を守る人、水を送る設備、それを保つ点検作業。目には見えないところで、暮らしを静かに支えてくれているものがあります。水は、まさに「意識されないインフラ」です。

防災の点検は、その存在を思い出すきっかけになります。備蓄の水を手に取るとき、蛇口から出る一杯のありがたさに、ふと気づく。当たり前だと思っていたものが、実はとても大切な支えだったと分かる。

私たちアールスペースは、そんな「あって当たり前すぎて意識されないのに、生活を支えているもの」を大切にしたいと考えています。新しく何かを買い足すことだけが備えではありません。すでに家にあるもの、すでに自分を支えてくれているものに気づき、感謝する。その視点こそが、暮らしを静かに強くしてくれるのだと思うのです。

ないものを数えて焦るより、あるものに目を向けて整える。この考え方は、防災だけでなく、日々の暮らしそのものを少し前向きにしてくれる気がします。

台所で蛇口をひねり、透明なコップに水を注いでいるシンプルな情景。水のきらめきと清潔感が伝わる、静かであたたかい一枚


おわりに

9月1日は、慌てて何かを買いに走る日ではなく、我が家の備えを静かにひらいてみる日にしてみませんか。

水の期限を確かめる。しまい込んだ道具に声をかける。備えのありかを家族で共有する。どれも特別なことではありませんが、この小さな行動の積み重ねが、いざというときの大きな安心につながります。

点検を終えたあと、あらためて蛇口をひねって水を一杯飲んでみてください。当たり前に出てくるその一杯が、少しだけ特別に感じられたら――今日の点検は、きっと成功です。

すでにある備えと、すでにある暮らしに、そっと「ありがとう」を。そこから、明日の安心が始まります。

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